俺が唯一愛した女


「おい優斗…」



親父は俺の行動に対しこの非常事態の中



お前は何をしてるんだと
眉間にしわを寄せている



『……。』



開けた引き出しの中には



夢の中で見た物と
同じ紙切れが1枚



「あきチャン…あきチャン…」



ミユは


彰人サンの手を握り
名前を呼び続ける。



そんな中



俺は3つ折りになったその紙切れを開く



『これ…』



紙切れいっぱいに
書き綴られた文字



この紙切れ俺知ってる
夢の中に出て来てまで



彰人サンはこれを俺に伝えたかったのか?



『彰人サン…』



懐かしく見た彰人サンの詩に



心臓の動きが早くなる



「あきチャン目を覚し…」



俺は無意識のうちに
ミユの彰人サンを呼ぶ言葉を遮り



「え、優斗…」



小さな声でうろ覚えの
バラード系の優しい曲



彰人サンの悲しみが
痛い程伝わってくる



あの懐かしいメロディーを口ずさんでいた..

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