俺が唯一愛した女


『なあ親父…』



俺は


黙り込むそんな親父の
態度に苛立ちながらも



親父の肩を掴む手を離し



床に座り込んだミユの体を
ゆっくり立ち上がらせる。



「あきチャン…」



立ち上がったミユは
そのまま彰人サンのベッドに近付く



「ねえあきチャン返事して…いつまで寝てるの?」



そう言いながら
ミユは彰人サンを見て力なく笑う



『……。』



ミユが笑ってる?



いいや。


その表現は微妙に違う



口元は上がっていても



ミユの瞳に輝きはなくて
虚ろな目をしているから



「あきチャン今日、人工呼吸器付けて貰うって…あきチャン自身頑張って戦って来たじゃん…」



ミユの目には
今にも溢れそうな沢山の涙が溜まる



そんな中


俺は唇を噛み締め
拳に力を入れる。



最後の最後まで



俺はもう彰人サンには
何も出来ないのか?



『彰人サ…』



ふと忘れかけていた
とある夢を思い出し



優斗は慌てて棚の引き出しを開けた

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