恋愛談義!

もちろん私は、世間一般が言うように彼を『愛』してはいなかったかもしれない。

けれどどうしても、そのたった30分で私が彼を愛しているかどうかなんて、伝わるはずがないと思っていた。



「――どうしてそんなことがわかるの? 私は彼を精一杯愛してたわよ」



口角をあげてにっこりとほほ笑む。


愛してる、なんて。

本気で言ったことなんか人生で一度もない。


けれど百の嘘も万の嘘も、重ね続けていればそれなりに恰好がつくもの。

人は自分が信じたいものを信じるのだから。



「またそうやってさらりと笑顔で嘘をつく。ほんと、気持ち悪い」



井上礼央は深くため息をついたあと、ティラミスが乗ったスプーンをもったまま、首を振った。



< 31 / 281 >

この作品をシェア

pagetop