強引な次期社長の熱烈プロポーズ
ドンッ



「…いい加減にしてください」


自分の懐に飛びついてきた美雪に冷たく言い放つと、美雪は床に落ちた携帯が通話中なのを確認してそれを拾い上げた。


「昨日は一晩中居れたのに、今夜はだめなんですか？」


わざと電話先の百合香に聞こえるようにそう言った。
柳瀬は美雪を睨みつけると携帯を取り上げようと手を伸ばした。
美雪はその手が届く前に、通話終了ボタンを押すと、2人の間にツーツーツーと機械音が流れた。


「こんなことをしても無駄だってあなたならわかるだろ」
「あなたこそ、あの人を想っても無駄かもしれませんよ」
「どういう意味だ」
「···彼女も向こうで誰かとよろしくやっているかもしれないわ」


その言葉の意味は容易に想像できた。
柳瀬も知っていて美雪も知っている共通の人物で、百合香に近づきそうな人物は一人しかいない。


「柳瀬さんだけが大事にしていても向こうがそうじゃないのなら、つらいだけでしょう？」


ゆったりと優しい口調で美雪は言って、携帯を取り上げようとした柳瀬の手が引っ込んだのを見てまたそっと抱きついた。


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