年上の彼氏。

車に乗り込むとあたしは携帯を取り出し、ある人に電話をかけようとした。


「あの、少し電話をかけても大丈夫でしょうか…?」

あたしはおどおどと運転席でエンジンをかけてる先生に聞いてみた。

すると、先生は


「どうぞ、いいですよ」


と、快く承諾してくれた。

プルルルルル…


『…はい。もしもし』


電話に出たのは男性の声。

「あ、国枝さんですか?」

『あ!これはこれは、社長!!どうなさいましたか?』

電話に出た男性はあたしの会社の社員だった。

あたしは数日間マンションを留守にする事を伝えた。

『え!!ということは、会社に来ないということですか!?』


電話の声からして国枝さんが焦っているのが手にとるようにわかる。


「いえ、会社には行きますし、仕事もキチンとやりますので」


そう言うと、国枝さんは安心したように快諾した。
そして、伝えるだけのことは伝えて電話を切った。


「すみません、宮下先生」

あたしは携帯をポケットの中にしまうと、先生に頭を下げた。


「大丈夫ですよ。気にしないでください」


笑顔で言うと、車を発進させた。


「俺の方こそ会社のことがあるとは考えずこんなこと言い出してすみません…」

申し訳なさそうに言う宮下先生にあたしは手を顔の前で横に振り、


「いえ…!すごく助かります!!」


必死に言うあたしを見て、先生はフッ、と微笑んだ。
あたしは何に対しての笑いだったのか分からなかった。
そんな疑問をもったあたしの顔を見た先生は


「あ、すみません。あまりにも焦ってたので、かわいいなぁって思って…」


まだ笑いながら言う宮下先生の言葉にあたしは顔が一気に赤くなった。

あたしは胸に手をあててみる。
すごい早さでドキドキしてる…


「あ…!」


ドキドキに戸惑っていたあたしの横で宮下先生が何かを思い出したように声をあげた。

あたしはパッと顔を上げ、横を向いた。


「家で先生呼びってマズイですよね…」


苦笑いで言った先生の言葉にあたしも


「そうですよね…。ご近所さんに変な誤解を招きますよね…」


これから先ご近所さんに見られるのは当たり前のことになる。

そうなると、先生の評判をあたしのせいで下げてもらっては困る。

あたしはう〜ん、と唸る。
すると、宮下先生が


「じゃあ、先生をつけない呼び方でこれから呼んでください」


と、サラッと言い切った。あたしはその言葉に驚いたけど、必死に隠し通そうとした。

宮下先生を先生呼びしないってことは…

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