契約の婚約者

「もしかしたら、私より沙希の結婚式の方が早かったりして？」


百面相をしながら考え込む沙希に、冗談ともとれないことを奈央は笑いながら言う。


「洒落になんない……」


「何で？片桐さん、本気なんでしょ？沙希もまんざらでもなさそうだし」


「どうなんだか……３３のオッサンは何を焦っているんだろうね～」


自分の気持ちに気付いた沙希はすっきりしたのか、けらけら笑う。


が、対面に座っている奈央の顔が何故か急に引き攣る。


「どうしたの、奈央？」


「沙希……う、しろ……」　


「ほう、いい根性だなぁ、沙希。誰がオッサンだって？」