契約の婚約者
後ろから降ってきた機嫌の悪そうな声に振り返ると、片桐がトレイを片手に立っていた。


「ゲッ……カタギリさん」


「何だ、その言いようは?広瀬さん、相席いい?」


「ど、どうぞ」


奈央は慌てて、席を立とうとする。


「広瀬さんが動く必要ないよ。沙希、横にずれろ」


「イヤ!向こうにも席があいてますよ、片桐キャップ?」


沙希は手でシッシッと片桐を追い払う。


自分の気持ちに気付いたはずだが、沙希の態度は変わらない。


普通ならこんな時はどう反応していいかわからないだろうに、流石肝が据わっているというか……



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