契約の婚約者
「カタギリさんはそんな私が好きなんでしょ?」


沙希はとびきりの笑顔を送る。口を開かなければ、この笑顔に騙される男は数知れず。


片桐は沙希の外見に惹かれたわけではないが……


「全く……お前は……」


「クス、それ、カタギリさんの口癖だね。結婚するのイヤになった?」


小さく溜息を零す片桐を覗き込むように沙希は聞いてくる。


片桐の忍耐を試しているのか、この状況を楽しんでいるのか……


「こんなことでイヤになるわけがないだろう?想定内だ」


「チッ……」


沙希はあからさまに舌打ちをしてみせた。やはりこの状況を楽しんでいるのだろう、舌打ちをする割りに、顔には自然と笑みが零れている。



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