契約の婚約者
「沙希、お前は俺を試している振りをして、俺に何でもさせようと思っているだろう?」


「あっ、バレた?」


「わかっていると思うが、高つくぞ?」


片桐が口角を上げてニヤリと笑う。


「クス、身体で払えなんてオッサン発言やめてよね?」


「そのオッサン発言のまんまだ。沙希、お前の全てで払ってもらおうか?」


「ヤダね。ビールで我慢して」


「えらく安くついたもんだな」


「冷蔵庫見てから文句言いな」


沙希は顎で冷蔵庫を指す。片桐の手は小麦粉まみれで冷蔵庫を開けられそうにないが、彼のためにビールを取ってあげようという発想はないらしい。


片桐は片手だけ手を洗い、冷蔵庫を開けた。



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