契約の婚約者
「なんだ、そんなことだったの?」


不機嫌から一転して、クスクス笑いながら沙希は片桐の項に腕を回す。


どうやら気まぐれ猫のご機嫌は直ったらしい。


「何だと思ったんだ?」


「別に……前にもカタギリさんこういうことあったから」


聞いてはいけない質問だったのだろうか。沙希の声のトーンが不機嫌に低くなる。


「いつだ?」


好奇心から片桐はつい尋ねてしまった。


「まだ、契約中のときよ。よくあったもの」


「よく覚えているな。その時と今は違うだろう?」


「まぁね。その時は私もどうでもよかったし。でも----」


「何だ?」


沙希の声が更に低くなるのを感じ、その続きを待つ。


言いたくないのか、少し沈黙が流れた。


「一度、私を奈央の代りに抱いたよね?」


じっと見つめられ、いきなりそんなことを言われるもんだから、片桐は返答に詰まった。




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