契約の婚約者
あぁ、あの時か、と古い記憶を呼び起こすように思い出すが、その時の感情をあまり覚えてない。


「別に代りに抱いたわけではない。あの夜は、どこかむしゃくしゃしていただけだ」


「ふ~ん。なんか、あの時のカタギリさんを思い出してしまったから」


これは驚いた。


沙希がこんな感情的なことを言うとは……


「----嫉妬か?」


「はぁ?」


何を言っているんだ、と沙希の眉間に思いっきり皺が寄る。


「私がそんなものするわけないじゃない。思い出してムカついただけよ」


沙希は本当に気付いてないらしい。


その顔が赤く染まり、潤んでいることを。


この沙希に恋愛感情の機微など理解できるわけがない。多分、どうしてイライラするのかも、切なくなるのかも理解できないのだろう。



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