契約の婚約者
アハハ、何気にしてんの?と笑う沙希を背後から片桐が抱き寄せた。


「黒沢、見るな。これは俺のだ」


「ちょ、カタギリさん、何言って……」


腕を抜け出そうとする沙希を片桐は羽交い絞めし、引きずるようにソファーへと戻した。


「荷物は俺が持っていく。お前はそこで座ってろ」


そう言って片桐は沙希の額をトンと一指し指でつく。


「イッタ……勝手なこと言うな、このエロオヤジ!」


立ち上がろうとした沙希をジロっと片桐が見下ろす。


目が「あのことを言ってもいいのか?」と言っている。


「…………」


「いい子だ。大人しく待ってろよ?」


沙希の頭をくしゃっと撫で、片桐は落ちている奈央の荷物を手に玄関へと向かった。


二人のやりとりに面食らっていた修一も慌てて奈央を抱きかかえ、片桐の後を追った。



< 89 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop