叶わない恋。
『夏希。』
桐ちゃんに呼ばれたあたしは夕日から視線を逸らし、桐ちゃんのほうに向いた。
『………………………』
でも桐ちゃんは何も話さず、ただ黙っている。
「何よ?桐ちゃん。
自分から呼んだくせに喋んないの??」
あたしは沈黙が耐えきれなくなり、口を開いた。
『相変わらず親御さんは忙しい??』
桐ちゃんがやっと喋ってくれた、そう思ったのだが…。
何?そんなことなの??
この雰囲気でそれを言うのですか…??
桐島さん……。
「忙しいよ、かなり。
3日前に帰ってきてから1度も帰って来ない。
娘があと1週間で遠くに行く、って言うのにさ。」
あたしははぁ~と溜め息をついた。
この溜め息は親への呆れと、
桐ちゃんへの呆れのために出てしまった。
あー……。
また、幸せが逃げやがった…。