叶わない恋。




『夏希。』


桐ちゃんに呼ばれたあたしは夕日から視線を逸らし、桐ちゃんのほうに向いた。




『………………………』


でも桐ちゃんは何も話さず、ただ黙っている。



「何よ?桐ちゃん。


自分から呼んだくせに喋んないの??」


あたしは沈黙が耐えきれなくなり、口を開いた。


『相変わらず親御さんは忙しい??』


桐ちゃんがやっと喋ってくれた、そう思ったのだが…。



何?そんなことなの??


この雰囲気でそれを言うのですか…??


桐島さん……。



「忙しいよ、かなり。


3日前に帰ってきてから1度も帰って来ない。



娘があと1週間で遠くに行く、って言うのにさ。」



あたしははぁ~と溜め息をついた。


この溜め息は親への呆れと、


桐ちゃんへの呆れのために出てしまった。


あー……。


また、幸せが逃げやがった…。







< 403 / 426 >

この作品をシェア

pagetop