沈丁花
「一番隊は一本木関門を守備!四番隊、五番隊は七重浜より攻め来る新政府軍に応戦!」

発砲音、隊士の叫び声、色んな音が響く中、馬上で指揮をとる。

そのときだった。


ズパーーーン!

発砲した弾が肉体を貫いた。弾は遠くへと跳んでゆく。

「ぐはっ!」

土方は腹部を抑え込む。グラリと身体が揺れ、落馬する。

ドサッ

だが、金属音や発砲音にその音は掻き消される。

「副長!副長!」

揺らされる身体。だが、その身体の目はいっこうに開こうとしない。

何も聴こえぬ身体の耳に、隊士は連呼する。

ああ、身体というのは脆いものだ。笑いたくなる。鬼の副長とあろうものが…流れ弾で絶命だと?冗談は止してくれ。

我の叫びは聞いてくれたのだろか…。ああ、まだ我の身体を揺さぶってる。良い部下を持ったもんだ。

近藤さん…見てくれてますか?

総司…あの笑い声で…大きな声で笑っておくれよ。

俺は…碌でなしだ…。


そのとき、一輪の梅が散ったことは誰も気付きはしない。
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