英国喜劇リトレイス

松明が欠け落ち、廊下の端々をチロチロと弱い灯りが舐める。

それも一つではない。

熱気と上がる灯りで辺りは染まり、俺の頬をも上気させた。

それでも、果てを目指して走っていたその時。


「ッ、うわ!!」

何かに躓いて俺は無様に転がった。

ベショ…という湿った感触に違和感を覚え、手のひらを見つめた俺は、目を見開いた。


「な、なんだよこれ……」


一瞬、フラりと意識を手放しそうになった。


廊下の床を湿らせているものが、転げた俺の所々を紅に変えていた。


< 13 / 409 >

この作品をシェア

pagetop