英国喜劇リトレイス
いつも柔らかく変化するカレンの表情が、初めて硬いと言えるくらい。
俺は身を固くした。

「ここで重要になるのは、ディゼル様の――」

カレンは俯いて、唾を飲む音がはっきりと聞こえた。

「ディゼル様の、お気持ち次第なんです」

「……え?」

俺の、気持ち?

「お戻りになるならば、茨の道となりましょう。
しかし、こちらにおいでになるならばあの道を通らねばなりません」

カレンは時計を背に正面を指差した。


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