英国喜劇リトレイス
さっきも言った通り、俺には他に三人の兄がいる。
ロクでもないのばっかりだ。
堅物三男・レイモンドにおちゃらけ次男エルヴィス、最悪なのは──長男
アイツだけは絶対に──
「ディゼル? まだあがって来ないのか? メシが冷め…る…」
降りてきたイアンは、階段で立ち止まった。
爪が食い込む程に手を握り締めて立ちすくむ俺を見て、目を伏せる。
「まだあの時のこと引きずってんのか?」
「……ああ。もちろんだ」
俺は近づいてきたイアンの目をまっすぐに見つめた。
それを正面から受け止め、軽く俺の肩を叩く。
「……メシだ。行こうぜ」
「そうだな」