「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
ところが離脱発進の直前に、エウロパ宇宙ステーション搭乗員との交代要員を乗せたまま、コントロール機能を失った調査船が突っ込んできた。

直や、その他の乗員も発進準備に忙殺されていて気づかずに、衝突は避けられないと思われたのであるが、日本人パイロットで今時めずらしく裸眼視力が三・〇以上ある重保が、遠くに、こちらに向かって突っ込んでくる調査船を発見し、隊長の直に報告をして了解を求めてから発進していたのでは間に合わないと判断して、咄嗟の機転で

「ただちに、宇宙船を発進させます。何かに摑まってください」

と叫ぶと同時に宇宙船を発進させた。

直が二列目の座席にしがみつき、船窓から外を見ると、発進した宇宙船のすぐ脇を調査船が擦れ違い、ステーションの一部に衝突をして、破片をばら撒きながら去って行った。

間一髪であった。

擦れ違う時に、直には、調査船の船窓に、何かに、すがりつくような顔をした人影が見えた気がした。

同時に宇宙空間では聞こえる筈の無い声が

「助けて・・・」

と聞こえた気がした

可能であれば、彼らを救いたかったが・・・

残念であった。

とにもかくにも直たちは、脱出用宇宙船に不具合を抱えながらも離脱に成功し、帰還に向けて出発した。

その後、宇宙船の不具合を修理しながら航海を続けていて、ほとんどの修理は完了したのだが、最も機能してほしい通信装置が、どうにも直らない。
< 182 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop