「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
では何故、自分たち人間が死ななかったのであろうか。

それは人間が有機物であるからではないだろうか。

つまり宇宙船という無機物を攻撃する為のエネルギー波動であり、有機物は、敵とは見なさずに、我々が浴びても何の影響も無いのではないか。

ということは一般に私たちが、生物と考えている物は死ぬことは無いのであろう。

でも、その場合、直たちの乗っている脱出用宇宙船がどうして動いたのか、動かせたのかという疑問が生じてくる。

郁江によると、脱出用宇宙船は全く動いていなかったので、生命体から見ると死んでいるのと同じである。

死んでいるものが、それ以上に死ぬということは無い。

つまり全機能が停止状態だったお陰で、脱出用宇宙船はエネルギー波動を浴びても、何の影響も受けず、発進が可能になったのではないかと言うのである。

直たちは、郁江の仮説を聞いていて、確かに郁江のように考えると、今までの事が、すべて当てはまる気がした。

とにかく仮説を地球に伝えたく思った。

早く伝えないと、もし郁江の言うような無機物生命体であれば、地球文明は崩壊してしまうであろう。

人間や動物や植物や細菌というような命は、すべて助かったとしても、無機物生命体が存在する限り、石器時代か、いいところ日本で言えば弥生時代程度の生活しかできない。

突然に、そんな事態に陥って、果たして、どれだけの人類が生き延びていけるのであろうか。

まして地球文明を崩壊させた後、月面基地や火星へ攻撃に向かうと、そこに住む人々には命があっても、生命維持装置がだめになるので、死が待つのみである。

如何にしてでも、生命体を葬り去らなければならない。

直たち乗員は全員そう考えるようになっていた。
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