「金剛戦士Ⅰ」黎明の夢
そこに、小惑星群の地球到達二時間ほど前に、発信装置が作動できる状態になり、地球へ送信を開始したのである。


「地球本部へ、こちらはエウロパ派遣隊の隊長の直であります。搭乗員は全員元気に地球帰還を目指して航行を続けております。できれば速やかに各搭乗員の家族に無事を、お知らせ願いたいと希望しております。どうぞ」

李は跳び上がりたいほど嬉しかった。

もうだめだと諦めていた搭乗員が、僅か一チームであるとはいえ、生存していてくれた。

気のせいかも知れないが、勇気と希望が湧いてきて、元気が出てきた。

李に続いて入室してきて、やりとりを聞いている科学者たちも同様に、エウロパ派遣隊に希望をもらった気がして、心なしか元気が出てくる。

李は返答をして
「エウロパ派遣隊へ、こちらは地球本部、了解しました。他に何か希望はありませんか。どうぞ」

通信を受けて直が

「エウロパ派遣隊から地球本部へ、大至急伝達したいことがあります。小惑星群についてでありますが、私どもは仮説を立てて考慮し・・・・・」

郁江の考えついた意見を、順序だてて要約し手短に説明した。

李を始めとして、科学者たちも送られてくる通信内容に傾聴している。

通信を聞いている科学者の中に、郁江と同じ研究をしていた同僚が、偶然にも二人いて、一人は大学時代の同級生でもある登志則、もう一人は研究所時代の先輩でアメリカ人のケントである。

二人は通信を聞いていて、なるほど、そういう考えもできるのだと気づき、着信を聞き終わると、すぐに賛同の意思表示を行なった。
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