佳き日に
「でも、そんなのは21年も前の話ですよ。」
「だけど、それを考えたって赤い女はまだ生きてるぞ。今も東北にいる可能性があるじゃないか。」
全く赤の女のことを気にしない、鉛丹は少し苛立つ。
それに、と続けて言う。
「赤い女は、雨さんを殺した。」
少し語尾が強くなってしまった。
鉛丹の気迫に桔梗も少し怯む。
「俺らの中で最強と言われた人だぞ。」
再度、念を押すように鉛丹が言うが、桔梗も反論する。
「最強なんて、いないはずです。そんな事言ったら僕達だっていくらでも強くなれますよ。」
メモリーズは元々、普通の人間よりも身体能力が高い。
そして、その気になればいくらでもその能力を高めることができる。
「記憶を盗めばいいんですから。」
桔梗のその言葉におい、と鉛丹が顔をしかめる。
記憶を盗むなんて言葉、メモリーズのことを知っている奴らが聞いたら一発でバレる。
少しは気を使え、と桔梗をたしなめる。
「俺が言っている最強ってのは、そういうことじゃねぇ。雨さんって人はな、盗むだけじゃなく、新しいものに塗り替えることも出来たらしいんだ。」
「…何をですか?」
「決まってんだろ。」
記憶を、だよ。
口パクで桔梗に伝える。
桔梗は息を呑み、目を見張った。
かなり驚いているようだ。
鉛丹も高い金を払ってこれを聞いたときはかなり驚いた。
メモリーズというのは人の記憶を盗み、自らの身体能力を上げることしかできないはずだ。
それなのに、他人の記憶を書き換えられる人がいた、というのだ。