佳き日に
[2]
窓の外が田んぼばかりの田舎ののどかな風景に変わってきた。
鉛丹も桔梗も、東北に行くのは初めてだ。
寒いから今まで来ようとはしなかったのだ。
暑いのは我慢出来るが寒いのは無理だ。
福島にくるのだって、今は夏だからきっと涼しくて過ごしやすいですよ、と桔梗が一生懸命に説得したのでようやく行く気になったのだ。
東北かぁ…と、鉛丹がしみじみ思った時、あることに気づいた。
「おい、桔梗。」
「何ですか?」
車窓から顔をこちらに向けた桔梗はかなりめんどくさそうな顔をしていた。
どうでもいい話なら聞きませんよ、とその目が言っている。
さっきから窓にへばりついて外の風景を眺めていることから察するに、桔梗はこういうのどかな田舎の風景が好きなのかもしれない。
さっきも、田んぼの周りにCDがぶら下がっていることや、カカシが立っているいたことを鉛丹にしきりに話していた。
今まで都会にしか住んでいなかったからなのか。
鉛丹はそんなことを考えながら、ついさっき気づいたことを桔梗に話す。
「東北って、赤い女がいたところじゃねぇか。」
「赤い女ですか?」
桔梗は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに合点がいったようだ。
「そんな人、いるわけないじゃないですか。」
「いただろ。実際、50人くらいは俺らみたいな奴らが殺された。」
メモリーズ、とは口に出さずに、俺らみたいなと、鉛丹は言う。
もし、鉛丹と桔梗の正体がバレれば、すぐに逃げなければならない。
殺されるからだ。
絶対に表にでることはないが、メモリーズは警察から追われている。