佳き日に




「兄さん、もしかして、雨さんのことを調べるために情報屋行きました?」

「だったらなんだよ。」

「椿さんのところ、行ったんでしょう?」

鉛丹は顔から血が引いていく気がした。
なんでバレたんだ。
椿といえばかなり信用の高いレアな情報を売ってくれる情報屋だ。
その情報量と信憑性の高さは他とは比べ物にならない。
ただ、その分値段に容赦ない。


「いくら使ったのかなんて聞きませんけど、これからは節約して下さいね。」

「聞かないのかよ。」

結構いい値段したんだぞ、とか半ばヤケクソで言う。
桔梗の耳に口を近づけて、額を伝えた。

お金に厳しい桔梗だからさすがにムッとするかな、と思ったが、予想に反して桔梗は笑いだした。
いつもと違う反応に鉛丹は少し戸惑う。


「実はですね、僕も椿さんの所に行ったんですよ。」

あっけんからんとそう打ち明ける桔梗。
鉛丹ははぁ?とマヌケな声を出してしまった。


「しかも、兄さんの倍くらいのお金使っちゃったんですよ。」

すいません、と軽く謝る桔梗。

「いや、お前、すいませんじゃなくてなぁ、」

「ごめんなさい?」

「そうじゃなくてな、使っていい限度額ってもんがあんだろ!」

「まぁまぁ、その分、ちゃんと情報仕入れてきましたから。」

「何のだよ!!」

「赤い女についてですよ。」

また鉛丹ははぁ?とマヌケな声を出してしまった。
鉛丹がよほど呆然としていたのか、桔梗がクスクスと笑う。


「僕だって一応、福島に行くことで色々調べたんですよ。」


そう言って桔梗はケラケラと笑った。
その顔は、いたずらが成功した子供のようだった。

なんだかいつもしっかりとしている桔梗とは違い、子供っぽい。
鉛丹はそうぼんやりと思ったときに、気が付いた。

そうだ、桔梗は子供じゃねぇか。

まだ14歳で、俺より1つ下で。

子供っぽいのなんて、当たり前だよな。
だってこいつ本当だったら中学2年生だしな。

今まで、当たり前のように桔梗が仕事を入れてきて、2人の住む場所も探してきてくれて、頼りになりすぎて忘れてた。

鉛丹の顔がニヤついてきてしまう。

そうだ、桔梗は俺の弟で、まだ子供で、唯一の家族なんだよな。


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