佳き日に
『あかいおんなは、はやめにけす。』
次に萩が見せてきたスケッチブックにはそう書かれていた。
子供がすべて平仮名で書いているとは思えない程内容はえげつない。
まぁ、『ころす』ではなく『けす』としているだけよしとしよう。
「それは、萩と灰神楽の二人だけでやるから手出しはするなってこと?」
『たぶんそう。』
ほぉ、私は邪魔ってわけか。
菘は少し苛立つ。
子供相手に大人げないだろうが、腹立つものは腹立つ。
5歳の萩にそんなことを言われたからこそ苛立っているのかもしれない。
「じゃあ、灰神楽に伝えておいてよ。」
慎重な菘。
周りから散々言われ、菘自身も慎重だと自負している。
行き当たりばったりでやっていたら、いつか絶対失敗する。
慎重というのが菘の強みでもあった。
場に流されない的確な判断。
「私は本物の赤い女をターゲットにするから、後継者の方は勝手にやりな。」
だが、今の菘は慎重の欠片もなく、感情に流されてそう口走っていた。