佳き日に
[7]
「神様のお告げだと思えばいいの。」
自らの顔の前で祈るように手を組みそう呟いていた少女のことを思い出していた。
死に直面していた彼女の目が涙に濡れていたかどうかは覚えていない。
武器の商売に成功して闇企業に喧嘩を売った馬鹿な男の一人娘だった。
殺しの標的の親族。
琴にとってはただそれだけの存在だった。
一家全員殺せという依頼ではなかったが、彼女の父親を殺しているところを見られてしまった。
こいつも死んでもらうしかないなー、と琴はめんどくさく思った。
琴がゆらりと動けば、乱れた黒髪の間から覗く目が大きく見開かれた。
自分が殺されることを悟ったのか、少女はその場に崩れ落ちた。
何度も見てきた、こんな場面。
泣き出して、命だけは助けてくれとと琴にすがってくる。
どんなにみっともなくても生き延びようとするその執念はすっげぇな、といつも琴は思う。
同時に、生きたいんだったら自分でどうにかしろよ、ともどこか冷めた風にも思っていた。
そんなふうに、この女も命乞いするんだろうな、と琴はゆるりと身構えていたが、予想は見事裏切られた。
彼女は両手を祈るような形に顔の前で組んだ。
ぎゅっと目を閉じ、そして、言い聞かせるようにこう呟いた。
「神様のお告げだと思えばいいの。」