佳き日に
雪が琥珀のために買ってきた服のうち、床に置いてある何着かを閏は手に取る。
サラサラしていて、すごく肌触りがいい。
生まれてこのかた女性の服を触る機会などなかったので、閏にとって女性服は未知の領域だ。
ヒラヒラしたレースや大きなリボンをつける意味が全く分からないが、これが可愛いのだろう。
閏がなんとも不思議な気持ちで女性服を見ていると、琥珀が心なしかそわそわしていることに気付いた。
その目はチラチラと雪をとらえている。
「あの・・・。」
「何だ?」
琥珀の遠慮がちな物言いにも雪は普段通り対応する。
対照的に琥珀はおどおどしている。
二、三度口を開き口をつぐみ、迷っているような仕草を見せる。
それでも10秒ほどしたら決心がついたのかしっかりと雪に目線を合わせ彼女は言った。
「学校に行きたいです。」
無理でしょうね、とコンマ1秒も置かず閏は心の中で呟く。
琥珀は今日本中のメモリーズから狙われているというのに、外を出歩いたりしたらそれこそ一瞬で殺されてしまうだろう。
仮にトレーニングを重ね持久力がついたとしても、彼らには敵わないだろう。
閏は当然雪も同じことを考えていると思った。
少し思案した後、いつも通り淡々とした口調で雪は口を開く。