佳き日に

[4]


気分を思いのままに変化させることが出来る装置があればいいのに、とエナカは思った。

久しぶりに元同僚に会い、少し疲れた。
気分がダルく、これからどうするか考える気力が全くない。




「頭が痛いとか、ありませんか?」

まだ二十代前半であろう看護師がそう聞いてくる。
ニコ、と仕事特有の愛想笑いを浮かべている。

「大丈夫です。」

そうは答えたものの、エナカの気分は全く良くなかった。

例えば、今のエナカのように何もしたくない無気力な時も、ボタン一つで何かやりたくなる気分にしてくれる装置。
楽しい気分になれるし、仕事をしたい気分にもなれる。

本当にそんなものがあれば、もっとずっと楽しく生きられたのかもしれないな、とエナカは思った。

なんでそんな装置のことを考え出したのか。

考えてみればすぐに心当たりがあった。

いつだったか。
エナカがまだ夏用の制服を着ていたので夏だったのだろう。
いつも通り古本屋で雨と話していた内容が、そんな装置のことだったのだ。

「それ、映画になったやつ?」

「うん。」

雨がエナカが読んでいる本の題名を見て話しかけてきた。

雨の持つ知識のジャンルはよく分からない。
学校について何も知らないかと思えば、映画はよく知っていた。


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