佳き日に





「映画は見てないんだけどね。それ、アンドロイドの話なの?」

「んー、まぁ、そんな感じ。」

雨に話を広げられても、その時エナカはその本を読み始めたばかりだったので内容なんてまだよく分かっていなかった。
題名にアンドロイドという単語が入っていたので、なんとなくそれに関する話だとは思うが。


「気分を自由に変えられる装置が出てくるんだけど、面白いよね。」

「へぇ。」

なんともふわふわして、特に意味もない、必要もない会話だった。

だが、エナカと雨の会話はいつもこんな感じなのでもう慣れた。

本を読むのは好きだが、その内容について熱く語り合ったり深く考察するほどのめり込みはしない。
おもしろいから、読む。

エナカと雨の古本屋での日々の読書はそんなスタンスだった。



「そういう、人間じゃないものが人間の世界で人間みたく生活するのって、変だよね。」

ぼんやりと呟かれた雨の言葉に、エナカはなんと返せばいいのか分からず戸惑った。
人間じゃないもの。
アンドロイドとか、機械のことだろうか。


「・・・悪くは、ないと思う。」

散々悩んでしぼりだしたエナカの言葉は、雨のツボに入ったようだ。
よく分からないが、雨は顔を下げて笑いを堪えている。


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