佳き日に
それから菘がダメなら灰神楽に、と状況説明を求めるメールを送ったが、返ってきたのはただ一行。
『艱難汝を玉にす。』
「・・・。」
「な、なんなん?何て読むんだこれ?」
桔梗はうっかり忘れていたのだ。
灰神楽と話すときは辞書を片手に持つ必要があるということを。
つまり、灰神楽と意思を疎通するのはすごくめんどくさいということを。
「兄さん、辞書ありますか?」
「ねぇよんなもん。」
鉛丹はバッサリとそう言うと、携帯をいじり始めた。
検索してくれているようだ。
その手があったか、と桔梗は少し感心した。
「か、かんなん、だってよ読み方。艱難。字、難しいな。」
「どういう意味なんですか?」
「人は多くの苦労を経験することによって立派な人物になる、だってよ。」
桔梗と鉛丹は顔を見合わせる。
いくら苦労はタメになる、といっても苦労のレベルが高すぎるだろう。
二人は同時にそう思っていた。