佳き日に

[7]


琥珀が学校に行った後、琴は閏にあの日記を見せた。
雪から預かった、雨の日記。

琴は文字の勉強を真面目にやってこなかったので読むのが遅い。
だから先に閏に貸そうと思ったのだが。

「琴が先に読んでいいですよ。」

そう言って閏は寝てしまった。
最近閏はよく眠るが疲れているのだろうか。

仕方なく琴は雨の日記を読み始める。



『十月一日。
昨日は結局茜の学校には行けなかった。
茜も学校には行かなかったようだ。
彼女はずっと泣いていた。
彼女の周りもなんだか慌ただしくて、俺は彼女に声をかけることが出来なかった。
道行く人々の話を立ち聞きしていたところ、彼女の父と母、弟が死んだらしい。
彼女の歌を聞きに学校に向かう途中、事故に遭ったらしい。
茜の家族は、ちゃんと彼女の歌を聞きにいこうとしていたのだ。
彼女は愛されていた。』



『十月二日。
茜は部屋から出て来ない。
まだ泣いているのだろうか。
茜の祖父母らしき二人が葬式の全てを執り行っていた。
これから茜は祖父母と一緒に暮すみたいだ。
家はそのままで。
だが、古本屋はもうやめるらしい。』



『十月四日。
茜は依然として部屋から出て来ない。
俺は父や母と過ごしたのは十年程だった。
両親が死んだときも悲しいとは思ったが、特に泣く事はなかった。
人間は情緒が豊なのだろう。
それか、家族というのは人間にとってすごく大切なのか。』



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