佳き日に
[1]
授業間の休み時間は十分。
十分はテレビを見たりゲームをしていればすぐ過ぎ去ってしまうのに、この授業間の時間はそこそこ長く感じる。
琥珀はその体感速度遅めな時間に、前の席の友達の話を聞いていた。
「でねー、先輩が風邪になったって聞いてメールしたの。風邪大丈夫ですか?と返信不要って。」
「返事きたの?」
「きた。返信不要の要、間違ってるよって。」
「・・・。」
「後で送ったメール見たら返信不用になってて、恥ずかしくて死にそうだった・・・。」
「まぁ先輩元気そうでよかったじゃん。」
友達の小さなかわいい失敗。
こんなほのぼのとした話ならこの前まで毎日聞けてたのに。
どうでもいい他愛ないことを話せる平和な日々。
今ではそんな日々がすごく大切で、貴重なものだと思える。
琥珀はその後も友達と次の時間の数学の話をしていた。
「ここの教科書の説明分かりづらいよね。」
そう言って友達がパラパラと教科書を捲るのを見てふと思った。
桔梗と鉛丹に勉強を教えるのに、教科書は必要だろうか?
一応、あるに越したことはないから持っていこうか。
見た感じあの二人は中学生くらい。
中学校の教科書なら、私の部屋の三番目の引き出しにあるな、と琥珀は自分の部屋を思い出す。
今日、学校が終わったら家に寄って取ってこよう、と思った。