佳き日に
「・・・言ってませんでしたっけ?」
「何をだし。」
「僕、味覚ないんですよ。」
「・・・はぁぁ!?」
目を大きくして驚く琴。
「すみません。琴には言ってたつもりになってました。」
「初耳だし!」
未だ動揺したままの琴をおいて、閏は立ち上がる。
財布を掴み、出かける用意をする。
「じゃあ、そういうことで味見はお願いします。」
「なんか持ってくエコバック大きいし。」
「あぁ、琥珀さんに頼まれたものも買ってくるつもりなので。」
「何を?」
「お菓子です。食べたいって昨日ねだれらたので。」
「・・・閏はあの女に甘すぎるし。」
「琴が厳しいだけですよ。」
では、と言い残して閏はドアから出て行った。
一人残された琴は手元の雨の日記を捲る。
とりあえず、雪が付箋をつけたところは一通り読んでみよう、と思った。
付箋と付箋の間に大分間が空いていた。
なかなかの厚さだったので、パラパラとページを捲りながら数えてみた。
なんと、茜と雨が別れてから八年経った日付だった。