佳き日に
琥珀は桔梗から目を離し手元の生物の教科書にマーカーを引く。
テストが近いのだ。
勉強熱心な桔梗の側にいれば自分もやらなきゃな、と思えてくる。
「それ、なんだよ。」
「植物の細胞。」
琥珀の生物の教科書にのっている図説を見て鉛丹は首を傾げる。
「ミトコンドリア?」
「うん。」
「何だよそれ。」
「エネルギーを作るらしいよ。」
「わけわかんねぇ。」
確かに細胞なんて小さなくくりのことは分かりづらい。
いや、宇宙とかの大きなくくりのことも分からないけど。
琥珀はマーカーを引きながら一つ一つの働きを確かめていく。
そんな琥珀の様子を見て鉛丹は眉間にシワを寄せる。
「なんで役に立たないこと勉強すんだよ。」
生きていくために必要ねーだろ、と鉛丹は零す。
琥珀も似たようなことはよく思う。
テスト前は特に。
でも、学校に行けなくても頑張る桔梗を見ていたら違った考え方も出来るようになった。