佳き日に
「生きていくためには確かに必要ないよね。でも、勉強は頑張る力っていうか、根気をつけるための練習みたいなものだと思うよ。」
「我慢する力ってことか?」
「そんな感じ。辛くても頑張れる力があれば、きっとどこの世界でも歯を食いしばって生きていけると思うし。」
へぇ、と分かったんだか分からないんだか曖昧な声を鉛丹は出した。
「鉛丹も勉強してみれば?」
「俺はいーよ別に。桔梗がやってくれるし。」
兄弟でもけっこう性格が違うようだ。
弟の桔梗がこんなに頭がいいんだから、兄の鉛丹だってなかなかのはずなのに。
琥珀がそう思っているとズッと椅子を引く音がした。
「ちょっとトイレ行ってきます。」
桔梗がそう言うと、琥珀の隣で黙々と本を読んでいた雪も椅子を引いて立ち上がる。
「コーヒー買ってくる。」
そうして、テーブルに残ったのは琥珀と鉛丹だけになった。