佳き日に




ちなみに椿の両親も情報屋だった。


椿はもう一度双眼鏡を着ける。

ビルの出口からグッタリしている男を担いだ男が出てきた。
マスクをしている。
有害な物質でも放出したのだろうか。

その後ろから、やはりマスクを着けた女性。
彼女が本物の赤い女だろう、と椿は思う。
だって、そうじゃなきゃ椿の拠点を知るはずがない。

椿が今まで拠点にしていたビルは、椿の両親が殺されたビルだ。

いつか何年後か大きくなった椿を赤い女が殺しに来るはずだ。
そうなったら返り討ちしてやろう。
幼い頃の椿はそう考え、両親の死に場所を拠点とすることに決めた。


「よし。」

ピッとナイフを取り出す。

小ぶりで持ちやすく、扱いやすい。
デスクワーク派の椿は銃が苦手だ。

カン、カン、と音をたてて階段を降りる。

せっかく赤い女の方から出迎えてくれたのだ。
こんなチャンスめったにない。

椿は赤い女のいるビルの方へ走った。



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