佳き日に


[6]




ゴシゴシと顔を擦る。
それでもこびりついた血の匂いは落ちてはくれない。

椿は血を拭い取るのを諦めて顔を上げる。
女が走り去る姿が見えた。
椿も慌てて後を追う。

もう四十代後半だろうに、赤い女は身のこなしが速かった。

だけど、身体能力も体力も自分の方が上だ、と椿は感じていた。
赤い女も同じことを思っているのか、行き当たりばったりで逃げている気がする。

たくさんの路地の曲がり角を抜けて住宅街に入った。
赤い女は傷を負っているはずなのに一向に速度が落ちない。

途中すれちがった犬と散歩しているおじさんがギョッとした顔をしていた。

それもそうだろう。
女二人が全力で追いかけっこのようなことをしているのだから。
うち一人は右腕から血をダラダラ流している。




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