佳き日に



椿は困惑したまま後を追う。
パステルカラーのマットに赤い女のせいなのか泥がたくさん付いている。

見回してみても赤い女の姿は見えない。
二階だろうか。
椿がそう思ったとき、ガタッと音がした。

ナイフを構える。


「何が目的?」

凛とした声。
振り向いた先には、赤い女がいた。

両手にトイレ用洗剤二種類持って。
そのなんとも奇妙で間抜けな装備に椿は吹き出しそうになった。
洗剤で赤い女はどうやって戦うつもりなのだろう。

「あんた、赤い女でしょ?」

ナイフを前に構えたまま、じりっと椿は足を踏み出す。
洗剤しか持っていないにもかかわらず、赤い女は怯む様子を全く見せない。

「昔は、そうだったよ。」

「昔?」

椿が眉を寄せたとき、ぶちゅっと嫌な音がした。
赤い女が持っている洗剤の容器から、白い液体が出てきている。
ツン、とくる洗剤特有の匂い。

「今はただのフリーター中年女だよ。」


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