佳き日に
「君は、最近ずっと違和感を感じてるよね?家族の死の時、自分が何をしていたのか覚えていないんだろう?」
「……家族の死のショックで、一時的に忘れてるんだと思いました。」
「それか、あまりの悲しさに心ここにあらずで過ごしてたのかも。」
ふふっと微かに男は笑った。
サングラスに似合わない、品の良い笑い方。
「でも違和感があるっていうのが不可解なところなんだよ。そして、何も知らないのに雨のメモに反応したことも。」
「……雨。」
「多分君はその雨に記憶を盗まれた。彼は盗む記憶を選べるからね。」
ゆっくりと茜は顔を上げる。
男のサングラスの奥の瞳は見えない。