佳き日に



そして再び萩と灰神楽の死体を見る。
遺体はもう半分以上はゴミと化していた。
あと五分もすれば、二人の死体はただの放置されたゴミにしか見えなくなる。


「萩とこの女の人は、赤い女は危険だからっていう理由だけで私を殺そうとしたの?」

ふいっと、琥珀は顔を上げた。
黒い瞳が、小さく揺れていた。

潤んだその双眸を見て、純真だな、と閏は思った。

平和な日常を生き、殺し殺される日々を知らない者の目。

愛と平和によって、人の愚かさや醜さを目の当たりにすることなく生きていた者の目。


無知は、最大の幸福だ。


「危険な存在は、早く消すべきだろ。」

雪の言葉に琥珀は口をつぐむ。

「理由としては最もだと思うぞ。生きるために自分たちの安全を脅かす敵を排除しようとした。生存本能に従った、理屈の通った話だろ。」

「……そっか、そうだね。」

少し俯いた琥珀の表情からは感情が読み取れなかった。



「人間の方が不思議だし。」

琴が口を挟んできた。

「宗教がどーだこーだで、神様のことで戦争始めるし。」

わけわかんねぇ、と呟く琴に、閏は思わず確かに、と思ってしまった。


見返りなどないのに、存在さえも危ういもののために命をかけて戦う人間の信仰は、よく分からなかった。




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