佳き日に




エナカの言葉にせんべいは顔を前に向けたまま「バカじゃねぇの」と返した。


「死んだ奴をいつまでも想い続けたって、何も進まねぇぞ。もっと生産性のある生き方をしろ。」

生産性。

人は子孫を残すことで次の世代へと命を繋げる。
それは使命でもあり、最大の生きる目的でもあるだろう。

でも、生きる目的はそれだけじゃないはずだ。


「せんべいは勝手なことばっか言うけどさ、私は別にあの人以外愛せないとか思ってるわけじゃないの。雨から貰った幸せだけで、生涯生きていけるって思ったからここにいるの。」

それ以上いらないくらい、それだけで十分、幸せだった。

「昔は逃げたけど、今回はちゃんとメモリーズにも向き合いたいの。」

サングラスで見えないはずのせんべいの目が少し揺れた気がした。

エナカの真剣な眼差しにせんべいはややたじろぐ。
伝わったのだろうか、エナカの想いは。


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