佳き日に
「神様は塵を集めてアダムを作ったらしいんだよね。つまり私は塵の子孫。」
琥珀はそこで顔を上げ閏の方を見た。
ふんわりと笑う。
「だから、人間とメモリーズもたいして変わらないと思う。塵の子孫に、ゴミの寄せ集め。」
笑顔の琥珀を閏は真正面から見ることが出来なかった。
神様なんて本当はいなくて、そのアダムとイヴだって人間の作り話で。
だから、本当は。
人間とメモリーズは全然違う、別物。
選ばれた者と選ばれなかった者。
大きな差が、溝が、そこにはある。
だが閏はそれを口にはしなかった。
琥珀のように言ってくれる人がいるのだから、閏は幸せなのだろう。
雨には、いなかったから。
もしも、雨が茜と別れる前に閏が琥珀に言われたように、誰かに言われていたら。
メモリーズと人間はたいして違わないと、半端な論理でも自信満々にそう言ってくれる人がいたら。
そこで閏は考えるのをやめた。
今更どうしようもないことを考えてもしょうがない。
ページを捲りながら鼻歌を歌う琥珀の背中を見る。
彼女はきっと、全て終わったら閏たちのことを忘れる。
雪によって。
雪が死ねば記憶は戻るだろうが、それはきっと何十年も先のことだろう。
何十年後か、大人になった彼女を想像出来ず、閏は意識をテレビへ向けた。