佳き日に
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お昼の時間帯なのに白川と待ち合わせた喫茶店はガラガラに空いていた。
エナカは少し不思議に思ったが、それ以上は深く考えなかった。
「エナカさん。」
真ん中の方のテーブル席に座った白川が手を振っていた。
いつもと変わらないスーツ姿に、人懐っこい笑み。
エナカを見るやいなや顔に花が咲いていた。
「ごめん待たせた。」
「いえそんな。全然待ってませんよ。」
白川はそう言ってエナカのために椅子を引いてくれた。
だがエナカはそんな白川の紳士な対応にも気づかず別のことに目がいっていた。
喫茶店のカーテンが、先程までポツポツと座っていたであろう客たちによって閉められていた。
音がなく、まるでエナカに気づかれないよう注意しているのかと思うほど静かな動きだった。
いや、実際エナカに気付かれたくなかったのだろう。
後ろからグイッと肩を引かれる。
「エナカさん、一旦座りませんか?」
振り返れば白川は笑っている。
だけどそれはいつもの人懐っこい笑顔ではなく、どこか底が見えないような笑顔。
「手荒な真似はしたくないですから、座ってください。」
気付けばエナカはスーツ姿の男たち何人かに囲まれていた。
嵌められた。
舌打ちして渋々席につく。