佳き日に
[1]
ドン、ドンと振動が体に伝わる。
同級生たちの賑やかな声が聞こえる。
体育館の床のひんやりとした冷たさを感じながら琥珀は眠気を堪えていた。
「琥珀ー、寝るなー。」
友達が笑いながら肩を揺さぶる。
琥珀はぼんやりとした頭のままニヘラ、と友達に笑いかける。
体育館でバスケをするとなると、試合をしていない間はけっこう暇なのだ。
お昼過ぎということもあって、琥珀は睡魔に襲われていた。
一つあくびをしたところで、友達が琥珀を見てニヤニヤしていることに気づく。
「……何?」
怪訝そうな声でそう問いかければ、友達はクスクス笑い出した。
「琥珀今モテ期到来してるんでしょ?」
「……は?」
「隠したってムダだからねー。彼氏いるんなら早く言ってよね。」
「え、え?彼氏?」
友達が笑いながら意味不明なことを言ってくる。
彼氏など十六年間一度もいなかった。
琥珀に対しての嫌味なのか。