佳き日に
「彼氏なんかいたこともないよ。」
琥珀がやっとのことでそう言うと、友達が面白そうにさらに大きい笑い声を上げた。
「うっそだー!だって今めちゃくちゃ噂になってるよ!」
「何が?」
「琥珀が駅前の店でイケメンと勉強してたって!」
なんてこった。
琥珀は顔が引きつる。
友達が言っているイケメンとは、もしかして、もしかしなくても雪のことだろう。
あの人一応世間一般ではイケメンの部類に入る顔してるから。
わけわからない本を読んでいてもイケメンはイケメンなのだ。
顔がいいって得だよな、と遠い目をしながら琥珀は思った。
友達は琥珀の様子などお構いなしに顔を近づけ興奮気味にまくしたててきた。
「一人はクールな大人で、二人は同い年か年下くらいのかっこいい男の子だったって!目撃者はたくさんいるんだから言い逃れはできないよ!」
「あー、と……親戚の年の近い子と勉強会してたの。」
苦し紛れにそう嘘をついた。
少し良心が痛むが致し方ない。
雪と鉛丹と桔梗と自分自身の関係を説明する言葉なんて琥珀には思いつかなかった。
まさかお互いの命を狙い合う敵だと素直に言うわけにもいかない。
よくよく考えてみればかなり奇妙なメンバーで勉強してたんだな、と琥珀は思う。
しかも琥珀以外全員殺し屋。
殺伐とした勉強会だ。