佳き日に





「復讐って、幸せになるっていうこと?」

「あぁ。聞くか?俺の復讐計画。」

「え、いや別にいいよ。」

「どこか、どこでもいいが広い家を買って、そこを本でいっぱいにするんだ。」

あ、雪勝手に話し始めた、と琥珀は苦笑い。
心なしか話している雪は楽しそうだ。
普段からあまり表情を変えない雪がここまで楽しげなのだ、本が好きなのだろう。


「そしてたくさんの蔵書に囲まれて死ぬまで本を読んで暮らす。別に人間に攻撃なんかしなくたって俺は俺で幸せになれる。」

そこまで言いきって、雪は琥珀の目を見た。


「他人のことで怒って真正面からぶつかるよりも、他人のことなんか気にならなくなるくらい幸せに暮らす方が良いと思う。」

メモリーズが人間よりも幸せな生活をおくる。

あくせく働くサラリーマンに、栄養ドリンクを何本も飲むクリエイター。
疲れた顔で電車に乗り込むたくさんの人たち。

対して、飛行機に乗って世界一周旅行を楽しむ琴。

確かに、当てつけとしては十分だ。
ちゃんとした、復讐だ。


「雪は本が好きだね。」

「あぁ、好きだ。」

風はやみ、生ぬるい空気が琥珀を包む。


「お前も、幸せになれよ。」


ポツリと、雪はそう呟いた。

その声がどこか寂しげだったのは気のせいだろうか。




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