佳き日に
「なぁ、変じゃないか。」
唐突に落とされた雪の言葉に三人は首を傾げる。
「何がだし。」
めんどくさそうにそう応えた琴。
雪は今いる通りの先を指差して、淡々と言った。
「車がこっちに突っ込んできそうだ。」
「あ、本当ですね。」
雪と閏のかけあいはまるで日常会話のようで。
たとえるなら「家の屋根に鳥の巣がある」「あ、本当ですね」くらい緊張感を感じさせない話し方だった。
しかし、さすがというか、琥珀以外の三人の対応は素早かった。
「頭下げろ。」
耳元で琴のその声を認識する。
だが、言われた通りにしようとする前に速く、強い力で腰を引っ張られた。
なす術なく横へ転がる。
同時に強い風が吹き、バアアンッとけたたましい音がした。
パンパンッと銃声、激しく走る人の足音。
琥珀が顔を上げると、縦横無尽に爆音をあげ走る車と、軽い身のこなしでそれを躱す雪と閏だった。
ポカンとその人間業じゃない光景を眺めていたら琴の怒声が飛んできた。