佳き日に
恐怖で涙を流すOLも、鞄を抱え逃げようとしていたサラリーマンも、転んで尻餅をついているおじさんも。
今この通りにいる皆一様に琥珀と、もう一人の人物を見ていた。
「鉛丹。」
琥珀の後ろには、鉛丹がいた。
銃を上へ掲げて。
先ほどの銃声は、彼が一発空に撃ったのだろう。
周りには不規則に車が放置されている。
そうだ、彼は敵だった。
琥珀は鉛丹の茶色い目を見つめる。
相手もまた見つめ返してくる。
一触即発の空気。
恐怖と戸惑いに、通行人や巻き込まれた人々も動けないまま琥珀と鉛丹の様子を見守っている。
「逃げたら、撃つ。」
静かな声で鉛丹は言う。
少年の体に銃は不釣合いな組み合わせだったが、妙な威圧感があった。
周りの人々が怖気づく。
一人の女子高生が、一人の少年に殺される。
見たくない光景だ。
だが、恐怖で逃げられない。
そのように慄く人々を他所に、琥珀は堂々と立っていた。
相手が鉛丹だと分かれば、安心できた。
「君に、私は撃てないよ。」
琥珀は鉛丹にそう宣言していた。