佳き日に
この女の言葉は嘘か誠か茜が計りかねていると、女が話し始めた。
「キリスト教の根底であるユダヤ教の選民思想って知ってる?奴隷のようにこき使われている人たちが、自分たちは神様に選ばれた人間だって思うこと。神様に困難を乗り越えていけるのか試されているって考えるの。」
神様。
一人部屋の中で両親と弟に心の中で謝り続けた日々を思い出した。
両親に謝りたいと、信仰心なんてなかったくせに神様に縋っていた。
「神様っていう存在を自分の都合の良いように作り上げてる感じ。」
家族が死んだこと。
雨を殺してしまったこと。
今、こんなに後悔だらけで辛いのも、神様が用意した困難だと思って乗り越えていかなければいけないのだろうか。
だとしたら、神様とかいう奴を一発殴ってやりたい。
殺してやってもいいとさえ思った。
神様なんかがいる世界よりも、家族や雨が生きている世界の方が遥かに価値があると茜は思った。
「でも、自分が置かれている困難な状況に嫌になって死んでいく人たちよりはよっぽどマシだと思うのよ。」