佳き日に




[4]





人がどんなに憂鬱で死にたいと思う時でも、嫌なこと全部投げ出してハワイに行きたいと思う時でも、海の癒し効果は変わらないんだろうな。
寄せては返す波の音。

エナカは窓を開け海風のしょっぱい匂いを嗅ぐ。
秋だからか、少し寒く感じる。


「前から思ってたんですけど、エナカさんって海好きですか?」

「うん、好き。」


白川の問いに間髪いれずに答え、海に来た本来の目的を思い出した。
白川を車から出させその隙に車を奪う予定だった。

エナカが声をかけようと横を向けば、いつになく真面目な表情の白川。

なんの飾り気もない寒々しい海を見つめていた。


「壮大で美しいですよね、海。」

「……そうだね。」

いつにない白川の様子にエナカは話しかけるタイミングを失ってしまった。



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