佳き日に






「俺らはつい忘れがちですけど、この海の美しさを作ったのは魚とかプランクトンとかの生き物たちなんですよね。何万もの生き物たちが一生懸命生きて、何万年もかかってようやくこの景色ができて。」


だから自然というものは多種多様な生物たちの作品、とでも言いたいのだろうか。
エナカは頬杖をつき白川から目を離す。


「別に、海がどうやって出来たかなんてどうでもいいよ。結果は綺麗なんだから。」

寂しげな海を見つめながらエナカはそう吐き捨てる。

やけに真面目くさった白川の話。
そんなこと一度も考えたことなかった、と素直に認めるのはなんだか癪だった。

隣で白川が笑いを押し殺しているのを感じる。


「まぁ、俺とエナカさんも百億年の生命の歴史の結果なんですよ。地球が誕生してから何度も繰り返されてきた生存競争が起こした、いわば奇跡ですよね。」

奇跡。
なかなかスケールが大きいことを言う。

クスリと笑ったエナカを一瞥しら白川はさらに続ける。


「メモリーズも、百億年の選ばれなかったものたちの思いが集まって生まれた、奇跡のはずです。」

船の姿さえもない海をエナカは一心に見つめる。




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